“島へのまなざし”を編集する。利島「ずっとしま編集部」スキルアップ講座レポート

 2026/02/21

2月11日、利島村でコミュニティ型ポータルサイト「ずっとしま」を一緒に盛り上げていく「ずっとしま編集部」向けのスキルアップ講座を実施しました。
当初は島内を歩くフィールドワークを軸に据えていましたが、当日はあいにくの悪天候。屋外のプログラムは中止とし、屋内で“編集”をテーマとしたワークに集中する一日に切り替えました。

島の暮らしや風景、季節のうつろいや日々湧き起こる感情などなど…。正解を急いで「ずっとしまらしさ」や「利島らしさ」を定義するのではなく、それぞれの感性をいったん自由に発散させ、あとから編集して企画へと落とし込む。そんな編集部らしいプロセスを、参加者全員で体験しました。

ずっとしまを、利島の未来につながる“拠点”へ

「ずっとしま」は、編集部の継続的な発信によって少しずつ認知の幅を広げてきました。そして、編集部が次に見据えているのは、記事を増やすことだけにとどまりません。

建設中のmulti community space「まごとえんがわ」

2026年4月のオープンに向けて準備が進む multi community space「まごとえんがわ」とメディアが連携することで、リアルな拠点で起きる出来事が記事になり、記事がまた人を呼び新たな活動や交流が生まれる。そんな循環が利島の未来を明るく照らす“エコシステム”になるはず、という仮説のもと進みます。

だからこそ編集部の仕事は、「取材して書く」だけにとどまりません。
日々の暮らしの中にある小さな気配や違和感、誇らしさをすくい上げ、読者に届く形へ翻訳していく。そのための“見方”を増やすことが、今回の講座の出発点でした。

「歩けない」からこそ、「持ち寄る」。屋内でできる“島歩き”へ

当初の狙いは、島を実際に歩きながら、足元の地形や風景、匂い、音といった五感の情報を共有し、そこからテーマを見出して企画に落とし込むことでしたが、雨予報が濃くなった段階で、そのプランを切り替えることに。

そこで、村民ライターのみなさんには、事前に「気になる場所」「利島らしさを感じるスポット」の写真と、そこにまつわるエピソードを持ち寄ってもらうことにしました。

島を歩く代わりに、それぞれの記憶や視点を編集素材としてテーブルに並べる。屋内でも「島歩き」と同じくらい、いやそれ以上にそれぞれが持つエピソードの深いところへ入っていける。そんな手応えがありました。

まずは「見方」を増やす。ゲストトークが開いた扉

講座の前半はゲストトークから。

マップ型エッセイ「伊豆大島、情緒の旅」を制作された武蔵野美術大学3年の江口さくらさんより、制作にまつわるお話をいただきました。当初は江口さんも利島に来島予定でしたが大型船が欠航となり、伊豆大島からオンラインでの参加となりました。

伊豆大島のコワーキングスペースWELAGOを拠点に、「生物多様性」や「ネイチャーポジティブ」をテーマとしたデザイン研究活動に参加した江口さん。学生や社会人などさまざまな人から、自然にまつわる体験や経験を写真とテキストで収集し、チーム内での対話を重ねながら「自然との関わりにおける体験の本質」を言語化。最終的に13の核となるコンセプトを抽出しました。

マップ型エッセイは、その13のコンセプトをさらに整理し、3冊のマップとして仕上げたもの。制作のプロセスに触れながら、土地の魅力を「情報」だけで捉えるのではなく、心が動いた瞬間=情緒の手触りから拾い上げ、言葉と構造で”地図化”していく態度を共有しました。

見慣れた風景も、見方が変われば別の輪郭を帯びる。編集部がこれから育てていくべき力は、まさにそこにある―。そんな気づきが会場の空気から伝わってきました。

写真とエピソードが、カラフルな“編集素材”になる

続いて行ったのが、写真とエピソードを持ち寄ったワークショップです。
参加者が持参した島内の写真に短いエピソードを添え、カラフルな画用紙を自由な形に切り抜いて、タイトルや言葉を書き込んで掲示していきます。

このワークでは、あえて視点を「分類」しすぎないことを大切にしました。
利島というフィールド自体が個性的で唯一無二。だからこそ、暮らし・風景・感情・季節―どこから入ってもいい。まずは自由に発散し、視点の多様性そのものを肯定する。編集部の土壌を耕す時間です。

テーブルの上に並んでいくカードは、まるで“島の断片でできた地図”のようでした。
同じ場所でも語り手が変わればガラッと変わる。何気ない一枚が、誰かにとっては大切な記憶の入口になる。見ているだけで楽しく、そして編集の可能性がぐっと立ち上がる瞬間が何度もありました。

最後は編集会議へ。島の愛が“企画”に変わる瞬間

後半は、そのまま「ずっとしま」で取り上げる企画を考える編集会議へ。
当初の屋外でのフィールドワーク構想が参加者の頭の中に残っていたこともあり、議論は自然と「島というフィールドをどう活かすか」に向かっていきました。

そこで立ち上がってきたのが、“かくれんぼ”や“鬼ごっこ”といったお馴染みの外遊びをベースに、利島ならではの要素を織り込んだ新しい遊びをつくる、というアイデアです。

子どもも大人も一緒になって楽しめる遊びを考え、新たなルールを考案し、実際に島で試してみる。そのプロセス自体が、日常の島の見え方を変えていく。そして当日の様子まで含めて記事にすることで、読み手にも「やってみたい」「行ってみたい」という気持ちが生まれていく。

遊びは、ただの娯楽ではなく、島を読むための“装置”にもなり得る。
そんな可能性が見えたのは、今回の大きな成果でした。参加者のみなさんの島に対する愛のある熱い想いが、言葉になり、構造になり、企画になっていく。
その瞬間に立ち会えたことが、何よりの収穫だったと思います。

リニューアルされたなかよし公園の壁面には「ずっとしま」

次に向けて:企画を“読まれる形”へ

今回の講座で確認できたのは、ずっとしま編集部の強みは、特別な情報量よりも、日々の暮らしの中で培われた“まなざし”にあるということでした。

そのまなざしを持ち寄り、並べ、言葉を紡ぎ、読者に届く形へと編集する。編集部がそのプロセスを重ねていくことで、「ずっとしま」はさらに利島にふさわしいメディアになっていけるはずです。

次回は、この日生まれた企画―“新しい遊び”がどのように生まれ、どんなルールが加わり、進められていくのか。遊びの創作と実践を通して見えてくる利島の新しい輪郭を、ずっとしま編集部ならではの視点で記録・発信していくはずです。どうぞ楽しみにお待ちください。

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